続・脱力日記

描いたり作ったりしてる人のダラダラ日記

眠っている間にポリープを取る

 昨年春に受けた基礎検診で大腸の精検が必要といわれ、生まれて初めて内視鏡検査を受けました。結果小さなポリープが1つ発見されて、半年ほどしたら取りましょうということで検査終了。そして気がつけば半年はとっくに過ぎて、ややっ!もう1年もたってしまったではありませんか!
 さすがにいつまでも放置というのも気持ちが悪くて、この春に検診を受けたときにポリープ切除日を5月8日に予約。昨日無事にポリープとお別れして参りました。良かった良かった!



良かったけれど、1週間はおとなしくしてなくてはいけません。


 その内視鏡手術でのことです。
 昨年初めて検査を受けたとき、先生は私の開腹手術歴を見て「麻酔して検査しましょう」と即断なさいました。手術歴から腸の癒着が予想されるので痛みを避けるためです。私もその点を危惧してましたので(手術の際に癒着がひどくて大変だったと執刀医が仰ってた)麻酔は願ったりかなったり。
 処置台に横たわって腕を出すと針が刺され、薬が入ったなと思うやいなやもう意識がなくなる感じでした。ただ、意識はなくなったはずなのに、ぼんやりどこかで他人事のように痛い。お腹の方がぼわわーんと痛い。危機感も恐怖もないんだけど、暗闇の中でなんか痛いのよねーー。という感じがする。名前を呼ばれたか呼ばれなかったか、いつの間にか目がさめました。この時には検査はすべて終っており痛みもなくて、眠っているときにどこか遠くで痛いような気がした記憶があるだけ。私としてはまったく苦痛なく検査が終ったという認識でした。
 ところが一休みしてから先生の説明を伺うと、かなり痛がっていたと仰るのです。見つけたポリープをその場で切除しなかったのも痛みが強くて無理だと判断したとのこと。私は確かに眠っていたし、痛みはあったけれど他人事の感じで苦痛ではなかったのに、先生からするととてもそうは思えなかった様子。いずれにしても次回はもう少し薬を多めにしましょうということでポリープ切除は延期されたのでした。
 そこで今回薬剤多目での麻酔、満を持してのポリープ切除となりました。今回も処置台に横たわり腕を出し…、あれ?眠くならないなぁ。処置台横の白い壁紙を見ながら眠りに落ちるのを待っているのに全然そうなる気配がない。変だなぁ。そう思いながら足下の方に目をやると腸内の様子が写されているモニターが目に入りました。内視鏡であんな風に見えるんだな…あれ?やっぱり全然眠くないねぇ。おかしいなぁ。と思ううちに処置終了。「終りましたよー」と先生が仰って処置室を出て行かれる。残された看護師さんが「大丈夫ですか?しばらく休んでくださいね」と体を仰向けにしてくださったので、それからようやく目を閉じてウツラウツラし始めたのでした。痛くはなかったけど眠りもしなかったなぁなどと思いつつ。
 さて、一休みのあとの先生の説明です。切除したばかりのポリープを見せてくださった後「痛がっていたね」ですと。
え?そんな記憶全くないんですが!
 どうも私は知らないうちに眠って知らないうちに目をさましていたようです。つまり眠ったことも目覚めたことも覚えていない。そのすっぽり抜け落ちた間に処置が行われて痛がっていたらしい。かなり愕然としました。以前に開腹手術を受けた時にはもちろん全身麻酔で、この時は意識がなくなる直前の記憶と意識が戻るときの記憶がしっかりあって、その間に意識のない時間があったことを認識できてました。でも今回はこれがない。眠る前と目覚めてからの記憶が地続きで、先生に言われるまで意識のない時間があったこと自体全然わからなかった。怖っ!
 すごくすごく不思議な感覚で、家に帰ってから娘にこの話をしました。そしたら「モニター見てるところも夢だったりしてね」と言われ、さらに愕然。いやあれは絶対にちゃんと見ていた。現実だった。と思うし、言うんだけれど、言ってるそばから自信がなくなっていく。処置室を出て行く先生の後ろ姿も、声をかけてくれた看護師さんの顔もすごくリアルだった。リアルだったけど、全部もしかして夢だったのかも…。いやまさかまさか。でも、記憶がどんどんあやふやになっていく。モニターには分割画面に腸内が写されていたけれど、確かに腸内だったけれど具体的にどんな様子だったか思い出そうとすると…。朝目覚めたばかりの時はしっかり覚えているのに、昼頃に思い出そうとしても手のひらに乗せた薄氷よろしく溶けてしまう夢みたいな、あんな感じ。
 いやいや、モニターはしっかりちゃんと見ていた!そこは自分の感覚を信じましょう。そうでないと怖いじゃないですか。今ここにいる私だって夢ってことになりかねない。それは困る。いやはや、私が私として意識を保つということの不確かさ。それを思い知らされた不思議な体験でした。
「わたし」なんてほんとあてにならないね。