続・脱力日記

描いたり作ったりしてる人のダラダラ日記

 051_シマフグ



朝起きたら、昨夜までなかった大きなシマフグが冷蔵庫に。
描くにいいべ?と夫が自慢顔で出して見せる。
確かについさっきまで生きていた魚の美しさというのは
魅力的……、って、まだ生きてるし。
エラはバフバフ、口はパクパク、ヒレだってピクピクしている。
こんなの描けません。ちゃんとしめてください!
夫は「梅按方式でいく」とか言って首だかどこだかに
鉄串を打って、しめてくれました。
見れば、先程までみなぎっていた生気が確かに失せていて
死ぬってこういうことだよなぁ。
体の放つ美しさも20%ほど減っちゃったなぁ…なんて思いつつ
スケッチ開始。なんだかんだ言ったって
魚屋店頭の魚なんかより100倍は美しいですから。
ところが、しばらく描いているうちに、バフバフですよ。
え????死んでないの?うっそ〜。
でも描き始めちゃったもんなぁ、見なかったことにして描く。
でもしばらくすると又バフバフ。今度はパクパクつき。
ええ〜。かなりびびりつつも鉛筆を走らせる。
しかしね、最後に尾ビレをペチンなんて動かされた日にゃあ。(泣)
まったく我が家の梅按先生の腕の程が知れたというもんです。
そこで、クレームを入れて再度しめなおしてもらう。
今度は見た目はどうあれきっちりしめて欲しいので
定番の頭ガッツリ。おお、目があっち向いた。
これは確定ですね。とうとうご臨終。
ようやく心落ち着けてスケッチに専念できます。
目があっち向いちゃったからさらに見た目は悪くなったけど
でも仕方ない。前に描いたトラフグもそうだったもんね。
って、・・・・今、軽くバフバフしなかった?ん?気のせい?
気のせいだよねぇ。。。って、いや〜!目が正面に戻ってる〜。
というわけで、本日のシマフグさんは目の逝っていない
端正なお顔に仕上がりました。
目が戻ったあとはほとんど動かなくて、しばらくしてから
顔面の皮が小刻みに痙攣したのが最後でした。
この時がたぶん本当のご臨終の瞬間だったのでしょう。
これは激しく極端な例ですけれど、
実物を見て描くってこういうことだよねぇ。
仕事で絵を描くときには、どうしても写真を撮って
そこから起こすことになる。
〆切やモデルの都合やら、いろいろ考えあわせると
現実的効率的な方法としてそれは仕方ないことだと思う。
でもそればっかりやっていると自分の中で
何かが枯れちゃう気がするのよねぇ。
それで実物スケッチを始めたんだけど。
写真からのイラスト起こしと違って実物から描くということは
3次元を自分の目で2次元に変換しなくちゃならない。
そこの所の楽しさもあるんだけれど、
やっぱり対象と同じ時間を共有するという意味が大きいよなぁ。
今日のシマフグさんには貴重な体験をいただきました。
私は自分が描いたこのスケッチを見るたびに
命が抜けていく時に感じる何かを思い出すことになると思います。