続・脱力日記

描いたり作ったりしてる人のダラダラ日記

昨日のこと。

一審が終わった時点で、すっかり終わったつもりでいたのですが、
今回もお呼びがかかってびっくり。
昨日は例の世間の耳目を集めた子殺し事件の控訴審の初公判でした。


二審ともなると、世間の興味も薄れて来るからなのか
昨年の初公判の時とは打って変わって報道陣も少なく
地裁全体の雰囲気はずいぶんと落ち着いたものになっていました。


各マスコミはそれぞれに画家用の席を用意することができ
一つの席を各社で順番で回すというようなこともありません。
私も一席しっかり確保してもらったので
気分的にはとても落ち着いて仕事をすることができました。


にしても。
やっぱりこの仕事はなんともいえない気持ちがするものです。


今回、被告は大変に不安定な状態でした。
入廷した瞬間からそれは見て取れて、涙ぐみ
足取りもおぼつかなく、体全体がふるえています。


それは私が見ていた午前中ずっと変わることがありませんでした。
両足は常に小刻みにゆれ、手はふるえ、
天をあおぐようにしているかと思えば
手にしたハンドタオルで流れる涙を抑えたり、
両手を組み合わせたり自分の体を抱くようにしてみたり。
とにかく心ここにあらずといった感じで、
ただ自分の中にわき起こる負の感情の波に
耐えているだけのように見えました。


それはどうひいき目に見ても正しい判断力を持った
健康な人の有様ではありません。
次の瞬間奇声を発しても、いきなり失神しても
全然おかしくないような状態なのですから。


そういう人間を前にして、それなのにその人間を見ることなく
検察は例の早口で淡々と調書を読み上げていきます。
死刑が妥当である、と。


裁判官も弁護士も無表情にそれを聞いています。
被害者のご両親は身じろぎもしません。
傍聴席の報道陣はメモを取ることに集中しています。
私はどう見ても正常でないその女性を必死にスケッチしています。
たくさんの人間がいるのに、検察官の
死刑が妥当である、という声しか響きません。


死刑が妥当であるといわれた女性は
その意味がわかっているのかわかっていないのか
ただガクガクと体を震わせています。


う〜ん。


人を裁く、人が裁かれる、
そういう仕組みは必要なことなんだろうけれども
それはそうなんだろうけれども。


この胸に残る違和感はなんともしがたい、です。