続・脱力日記

描いたり作ったりしてる人のダラダラ日記

動き出す商店街プロジェクトのこと

これは今月31日まで、田沢湖クニマス未来館で開催中の小西由紀子展(注・リンク先はYouTubeです)に展示中のイラストの一部です。

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光が映り込んで見にくいですが、秋田県内陸南部・美郷町六郷をイラストマップにしたものです。六郷は、花火で有名な大曲とかまくらで有名な横手のちょうど中間あたりに位置します。戦国時代には二階堂氏の本拠地として栄え、その後も羽州街道と、大覚野街道(角館〜阿仁〜綴子)、角間川河港に向う角間川街道が交わる交通の要衝として長く栄えてきた町です。それが近代になって鉄道の駅を誘致できなかったことをかわきりに、町の外をバイパスが通りそれに沿って大型商業施設ができ人口が減り、中心部の商店街はいわゆるシャッター商店街となってしまいました。

 

20年ほど前、その状況をなんとかしたいと町の若い人たちが参加して六郷町づくり会社を立ち上げました。その活動の一つとして当時まだ昔の面影を色濃く残していた町並みのイラストマップを作成することになり、お手伝いさせていただいたものです。
すでに往時の華やかさは失われ、シャッターをおろした店もぽつりぽつりとあったものの、20年前はまだ旧街道沿いの賑やかだったころの建物がいくつも残り、魅力的な町並みをなんとか維持していました。
商店街を中心に魅力的な建物を片っ端から写真に撮り、イラストとしてまとめていく作業はとても楽しいものでした。御本陣、造り酒屋、呉服屋など大きな建築物がそこここに立ち並ぶ様子は本当に素敵でした。

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あれから20年。今このマップの中のどれだけの建物が残っているかというと…。商店はシャッター下ろしているどころか、建物自体がなくなって空き地になっていたり、古い趣のある民家は随分となくなってしまいました。ああ、あの時になんとかならなかったのかしらと、このマップを見る度に思います。あの時、若い人たちががんばってこれを作ったのに、その動きは結局だれにどう引き継がれたのかなと。

 

そんなことをぼんやりと思っていましたら、昨年、秋田県の肝いりで「動き出す商店街プロジェクト」というものが立ち上がったという事を知りました。空き店舗率を下げ、全国でも最下位クラスの起業率を上げることを目標に、まずは商店街のやる気のある若者を県が後押ししようというもののようです。このプロジェクトへの参加募集に応えたのが、男鹿市船川と美郷町六郷の若者たちだったとのことで、節目毎に公開でプレゼンテーションが行われています。

 

そこで、昨年の第1回に引き続き、先週3月23日に行われた第2回目のプレゼンテーションを見に行ってきました。船川チームも六郷チームもすでに魅力的な空き物件を抑えていて、それをどう活用していくかということが主題になっています。

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【中央上と左下に拡大して描かれた土蔵造りのお店はもうありません。今回のプロジェクトの舞台となるのはちょうど中央あたり、逆さまにインプレッションと書かれた物件です】

1回目のプレゼンテーションではぼんやりとしたイメージでの起業プランだったのが、今回は随分と具体的になっていて、夢を語るだけでなくどう収益をあげ、持続させていくのかということが説明されました。若者といっても、どちらのチームもすでに社会に出てそれなりの経験を積んだ商店主などが中心になっていますので、現実味のあるプレゼンテーションだったと思います。

 

ところで、前回もそうだったのですが面白いのはこのプレゼンテーションの後の基調講演です。今回はエリアリノベーションに取り組んでおられる東北芸術工科大学教授の馬場正尊さん。前回は株式会社まめくらしの青木純さんが講演されました。内容は、どちらもつきつめてしまえば「今」の感覚にあふれた不動産活用の仕方、古い建造物のリノベーションの仕方について。「今の若い人」に届けるための(基本的にお金をあまりかけない)ノウハウがいろいろと語られたと思います。
個々の具体例が面白いのは言うまでもないのですが、特に今回の馬場さんのお話では世の中の仕組み、物事の決め方の流れが変わってきているということ(変わって欲しい、変わるべきといった気持ちも含めて)が印象に残りました。

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詳しく説明はしませんが、上の図を見て頂くとなんとなく話の内容が想像できるのではないでしょうか。私もこうであったらいいな。と心から思います。

 

が、実は一番印象に残ったのは、内容というよりも、講演者のパッションでした。エネルギーね。「こうあって欲しい、こうだと楽しいでしょう、こうすればよりよくなるよね、そうでしょ!」という壇上から発せられるパワーです。アジテーションの力。
ああ、秋田のチームはこれに欠けるなぁと思ったのです。何か新しいことを始めるとき、特に人を動かして何かをやろうという時、これがとても大事なものなんじゃないかしら。そしてこのパワーの原動力が何かというと、なんだかわからない突き動かされるような想いなのではないかしら。もちろんそういう気持ちが秋田チームにないわけはない。なかったらだいたいこの場にもたどりつけてないのですから。たぶん想いはあってもそれを十二分にパワー化、具現化できないということなのでしょう。パワー化、どうしたらできるのでしょうね。というようなことを思いました。

 

それはそれとして、20年ほど前にもがんばった若者たちがいたこと、その人たちが取り組んだ事、その結果がどう今につながっているのか、六郷チームの人たちがしっかり踏まえていてくださるといいなと思います。町並みはすでに20年前とすら比べるべくもないものになっていますけれど、それでも六郷らしいものはまだ残っている筈。そこに住む人たちはもちろん外から来る人たちがその魅力をストレートに受け止められるような商店街になってくれるといいなぁと、6年程前まであの商店街で小さな「絵と器の店」を開いていた者として、心から思った次第です。

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